夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
 その気持ちを正直に口にした。
「そうだな……。君の記憶は、二年前のままだった。その頃、俺たちはまだ付き合ってもいない」
 付き合う――。
 その言葉にすら、シャーリーは敏感に反応してしまう。
(私、本当に団長とお付き合いをしていたの? どうして? どうやって? そもそも、なぜ団長と結婚をしようと思ったの?)
 たくさんの疑問が、シャーリーの頭の中を走っていく。だが、今のシャーリーはその答えすら持ち合わせていない。
 二年という期間が、シャーリーを変えてしまったのだろうか。
 二年もあれば、産まれたばかりの赤ん坊は歩き、喋り出す年月だ。けして短いとは言い切れない。
「二年……」
 呟いたシャーリーは、気になったことが一つあった。
「あの、団長」
 シャーリーから呼ばれた彼の顔は、嬉しそうに輝いていた。
「なんだろうか」
 その言葉もどことなく明るい。
「あの。二年の間にどのように税率が変わったのかを知っておきたいのですが。私、まだ事務官として働いておりますよね?」
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