夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
◆◆◆◆

「はぁああああああ」
 大きく息を吐き、頭を抱えているのはランスロットである。
「かっこつけすぎたんじゃないのか?」
 なぜかジョシュアがいる。彼は、朝も早くからランスロットの執務室を訪れると、勝手に事務官を呼びつけて、お茶を淹れてもらっていた。
 ジョシュア曰く「ランスロットだけでは、事務官も怯えてこの部屋には近づかないからな」とのことだ。
 彼がここに来るたびに、王太子とは暇なのかと、ランスロットは思っている。
「そのまま、シャーリーをお前専属の事務官にしとけばよかったんじゃないのか? 荒療治」
 カップの中のお茶にふぅふぅと息を吹きかけている様子は、王太子とは思えないような行為だ。
 ジョシュアはここでこうやって羽目を外すことが、息抜きになるらしい。
 だからランスロットも、今のところはいちいち口うるさく注意するようなことはしない。
「荒療治をし過ぎて、嫌われたらどうする? 元も子もない。むしろ、どうしようもない。振り出しに戻ったというよりは、むしろ振り出し以上に戻っている」
 そう言ったランスロットは「ああああああ」と情けない声を出して、机の上で頭を抱えた。
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