夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
◇◆◇◆

 シャーリーがランスロットの専属事務官として、彼の執務室に配属されたのは今から一年前である。出会ってから一年、ランスロットは彼女と書類と共に添えられる一言メッセージでやり取りをしていた。
 一年かけて彼女との距離をなんとか縮め、最後に専属事務官になって欲しいと依頼したのだ。
 そのときのランスロットの事務的な仕事は溢れており、誰か事務官をつけなければならないという話にはなっていた。いや、その一年も前から話は出ていたのだ。その問題が表面化したことによって、やっと周囲が動いた。
 だけど、なり手がいない。
 その悩みをシャーリーとのやり取りに書いてしまった。
 すると彼女の方から、『私でよければ』と返事がきたのだ。
 この返事を受け取ったときのランスロットが有頂天になったのは言うまでもない。このメッセージを持って、ジョシュアの元まで全力疾走して報告へと向かった。
 ジョシュアは苦笑していたものの『よかったな』と口にしてくれた。
 だが、すぐに彼女を専属事務官として迎え入れるのは難しい。何しろ、彼女はランスロットと六歩以上離れる必要があるのだ。だから、彼女の机はランスロットの執務席から少し離れた場所に置く必要があった。
 それでも側に彼女がいると、わからないところをすぐに確認できるという利点がある。
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