夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
わからない書類をソファの前にあるローテーブルに置くと、シャーリーがそこから書類を持っていき自席で確認する。そして、ランスロットのわからなかったところを確認し、細かく解説を書いた紙を書類と一緒にローテーブルへ置く。シャーリーが自席に戻ったところを見届けたランスロットが、そこから書類を受け取る。という、回りくどいことをしていた。
それでもランスロットの書類仕事が、今までよりもはかどり、締切にも余裕をもって提出できるようになったことで、他の事務官からも大好評であった。特に事務官の責任者であるアンナは、『シャーリーが引き受けてくれて、こちらの負担も軽くなったんです』と微笑んでいた。
もちろん、助かっているのはランスロットも同じだ。
彼女との物理的な距離はまだあるが、心理的な距離は徐々に近くなっていると、彼は思っていた。
だが、少しずつ距離が近づくにつれ、ランスロットにも欲というものが出てくる。今よりももっと彼女と親しくなりたいという欲である。
同じ部屋にいるにも関わらず、喋ることは少ない。基本的なやり取りは、いつものメモで行っている。
ランスロットはそのメモに、いつも違うことを書いた。
――表通りに新しいお菓子屋が開店したと聞いた。悪いがそこでお菓子を買ってきてもらえないだろうか。お茶の時間に出して欲しい。
会話をすればすぐ伝わるのに、文字にするとどのように書いたらいいかが難しい。お菓子はシャーリーの好きなものを買ってきて欲しいし、できたらシャーリーにも食べてもらいたい。
それでもランスロットの書類仕事が、今までよりもはかどり、締切にも余裕をもって提出できるようになったことで、他の事務官からも大好評であった。特に事務官の責任者であるアンナは、『シャーリーが引き受けてくれて、こちらの負担も軽くなったんです』と微笑んでいた。
もちろん、助かっているのはランスロットも同じだ。
彼女との物理的な距離はまだあるが、心理的な距離は徐々に近くなっていると、彼は思っていた。
だが、少しずつ距離が近づくにつれ、ランスロットにも欲というものが出てくる。今よりももっと彼女と親しくなりたいという欲である。
同じ部屋にいるにも関わらず、喋ることは少ない。基本的なやり取りは、いつものメモで行っている。
ランスロットはそのメモに、いつも違うことを書いた。
――表通りに新しいお菓子屋が開店したと聞いた。悪いがそこでお菓子を買ってきてもらえないだろうか。お茶の時間に出して欲しい。
会話をすればすぐ伝わるのに、文字にするとどのように書いたらいいかが難しい。お菓子はシャーリーの好きなものを買ってきて欲しいし、できたらシャーリーにも食べてもらいたい。