夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
「さすが、情報が早いな……」
 ランスロットは心の中で思っていたはずなのに、つい声に出てしまったようだ。ジョシュアはニヤリと笑っている。
「で、お前は何をしているんだ?」
「見て、わからないのか? シャーリーの机を移動させている。彼女には隣の部屋で仕事をしてもらう」
「うわぁ、一年前よりも悪化してる。スタートラインにすら立てないのか。そりゃそうか。二年前じゃそんなもんだよな。そこから一年かかったことを考えれば……。まぁ、いいんじゃないのか? うん」
 ジョシュアは勝手に納得している。
「で? 一体、朝から何なんだ? シャーリーのことを言いにきたのか?」
 ランスロットは机を運びながら、ジョシュアをギロリと睨んだ。
「そうそう。報告があったんだ。朝一で魔導士団からあがってきたんだが、あいつ、死んだんだよね」
「あいつ?」
 残念ながら、ランスロットにはそれだけの会話の中で、該当する人物に心当たりはない。
「お前を襲ったやつ」
「あっ?」
 ガンと運んでいた机を思わず落としてしまった。
「いでっ」
 さらにその落とした先がランスロットの右足の上という悲惨な状況であるが、ごついブーツのおかげで骨に異常はなさそうだ。
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