夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
 ランスロットは金勘定系の書類は苦手だが、こういった書類は得意である。ランスロットが作れば半日もかからずに仕上げられるが、これに慣れていない者が作るとその倍以上がかかる。
 そしてそこからの申請。さらに申請が通った直後の犯人の死。
「他殺か?」
 ランスロットが尋ねると、ジョシュアは「そうだ」と答える。
「ようするに。内部に敵に通じている者がいるってことだな」
 ジョシュアの言葉に、ランスロットは眉を寄せた。
「護衛を増やそう。敵が内部に潜んでいるということは、そういうことでいいんだよな?」
「さあな? もしかしたら、狙われているのは私ではないかもしれない」
 今度はジョシュアがギロリと睨んできた。
「俺?」
「じゃなかったら、お前の結婚式でお前を狙わないだろ?」
 ようするにジョシュアは狙われているのはランスロットであると言いたいのだ。
「だが、俺の命よりもジョシュア王太子殿下の命の方が大事だろう。警護については人を増やすように手配するから、そのつもりでいて欲しい」
「それってさ。私の見張りが増えるってことだろう? そうなったら、こうやって自由にお前のところに遊びに来ることができなくなるじゃないか」
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