オフクロサマ
「オフクロサマ!」


男が叫ぶたびに臓器がひとつえぐり取られる。


布と綿でできた自分の臓器を智香は間近で見つめていた。


そしてすべての臓器を取り終えると、男は茶碗に手をのばす。


白米と味噌汁が内蔵を抜かれた腹部にねじ込まれていく感覚を智香は呆然として感じていた。


やがて、智香の腹部はいっぱいになった。


パンパンに膨れ上がった腹部にもともとあった作り物の内臓が戻されて、縫合される。


眼球を動かして見学者たちを見て見ると、その中に裕貴の姿を見つけた。


キツネのお面をつけた裕貴の隣にはスーパーマンのお面をつけた安喜くんが立っている。


ふたりともお面をつけていてその表情はわからないはずなのに、智香にはふたりが笑っているのがはっきりとわかった。


ふたりだけじゃない。


他の客たちもみんながこちらを見て笑っていた。


まるで拷問を見学しているような卑劣な目もあった。


最後まで縫合を終えると、男は先にいなくなった。


やがて智香の体もふたりの村人によって担がれ、移動させられる。


そこから先は真っ暗だった。

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