オフクロサマ
その水で顔を洗うとスッキリとした気分になり、悪夢が頭の中から消え去っていく。


タオルハンカチに水を含ませて軽く絞ると公会堂の中へ戻った。


まだ眠っている裕貴の横でキャミソール姿になり、汗を拭う。


頭からシャワーを浴びたような爽快感はないけれど、汗がスッと引いてヒヤリとした冷房を感じるようになる。


「そんな格好してると襲われるぞ?」


不意に声をかけられて驚いて振り向くといつの間にか裕貴が起きてこちらを見ていた。


「いつ起きてたの?」


慌てて服をかき集めて胸元を隠す。


「少し前から」


裕貴はクスクスと笑いながら起き上がると、智香の体を後ろから抱きしめた。


「朝になったら大田さんの家にお風呂を借りに行こうか」


「そうだね。朝ごはんも買いに出なきゃいけないし」


この村にはひとつだけ商店があると聞いている。


お祭りは昨日で終わったから、今日から再開されているはずだ。


「でも、その前に……」


裕貴がわざとチュッと音を立てて智香の肩にキスを落とす。


せっかく汗をぬぐったばかりなのに。


そう思ったが、若い智香の体もまた裕貴を求めていた。
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