オフクロサマ
☆☆☆

それからふたりが訪れたのは昨日の祭りで黒い和服を着ていた男の家だった。


この男の家についてはさっきの騒ぎの間に村人から聞き出していた。


けさの男性の死は昨日祭りと関係していたようなので、聞き出すは安易だった。


男の名前は桜というらしく、大田の家から歩いて20分ほどの距離にその家はあった。


桜の家は他の家と同様に白壁でオレンジ色の屋根をしている。


特別扱いされているわけではなさそうだ。


その様子に少し安心しながら玄関チャイムを鳴らすと、すぐに男が出てきた。


今はTでシャツにハーフパンツという格好をしているけれど、昨日黒い和服を着ていた男で間違いない。


「こんにちは、昨日のお祭りのことで少し聞きたいことがあって来ました」


裕貴は丁寧に自己紹介をしてそう伝えた。


桜はけげんそうな表情を浮かべながらも客人をリビングへと通した。


リビングには大きな一枚板のテーブルがあり、その周りに紺色の座布団が置かれていた。


テレビは小型で古いもので、壁一面に本棚が設置されていた。


大田家とはまた違った雰囲気の室内に少し圧倒される。

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