オフクロサマ
「あの祭りの原点はなんなんですか?」


裕貴が別の方向から祭りについて質問をした。


話す気のないことをしつこく聞いていたら、これ以上なにも教えてくれなくなってしまうかもしれないと、懸念したのだ。


「祭りの原点はこの村に訪れた飢餓だ。大雨や日照り続きで作物が育たない年が続いたことがあったらしい。その時に村人たちがたくさん食べられるようにと祈りを込めて作られた祭りだ」


「あの人形はここの村人を模していたんですね」


裕貴の質問に桜は頷いた。


あの一見気味の悪い儀式はそんな意味合いがあったのだ。


「あの人形の腹をいっぱいにすることで、村人が空腹に飢えないように祈願したんだ。もちろん始まった当初は本当に食べ物がなかったから、藁や小石をつめてたらしいけどな」


そういう理由で祭りが始まったのならなにも怖がることはない。


だけどやはりわからないのはオフクロサマについてだった。


餓鬼をなくす祈願のために作られた祭りでなにを乗り移らせるのだろう?


ゴーサマのときと同じで作物の神様とかだろうか?

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