オフクロサマ
同じ空間にいなくても真一の緊張感がこちらにまで伝わってくる。


『あぁ、そうだ……祭りに参加した。黒い和服の男が出てきて、人形の腹に食べ物を詰め始めた』


間違いない。


それはオフクロサマだ。


「それでどうした?」


『最初は音を立てるなという言いつけを守る予定だった。だけどあんな祭り初めて見た。衝撃的だった。どうしても自分の目だけではなくて、記録として残しておきたいとおもった』


「それで?」


裕貴は嫌な予感を覚えながらも先を促した。


『とったんだ……。スマホで、ビデオ撮影をした』


裕貴は大きく息を吐き出した。


そんなことだろうと思っていた。


「真弓と宏も?」


『あぁ。俺と、唯もだ』


全員で音を立てたのだ。


少しくらいなら大丈夫だろうと、あの祭りの最大の禁忌を破った。


『でもそれは間違いだったんだ! あの祭りに参加した次の日から視線を感じるんだ。誰かにずっと見られてる。その誰かがいつ襲ってくるかわからない!』


それはきっとオフクロサマだろう。


オフクロサマは禁忌を犯した人間を追いかけて殺す。

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