オフクロサマ
☆☆☆

資料館へ戻り智香に事情を説明すると智香は今にも泣き出してしまいそうな表情になった。


「なんでそんなこと……」


そう呟いて言葉を切る。


しかし、自分たちだってあの祭りで音を立てていてもおかしくはなかった。


オフクロサマからの忠告はあったけれど、人に聞こえないくらいの音なら大丈夫だろうと思ってしまっていたかもしれない。


智香たちは単純にあの場の雰囲気と異様さに圧倒されて物音を立てなかっただけに過ぎないのだ。


「このままじゃ近いうちに唯と真一も死ぬ」


裕貴の言葉に智香の胸は苦しくなった。


友人がひと夏に4人も死ぬなんてありえないことだ。


絶対に阻止しないといけない。


そのためにもこの膨大な資料を読んでいくしかないんだ。


智香は自分にそういい聞かせて本に目を落としたのだった。
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