オフクロサマ
隠された大虐殺
逃げるように公会堂まで戻ってきたふたりはエアコンが部屋を冷やす暇もなく本をめくっていた。


分厚い本の中から昭和10年から3年間続いた不作の時期を確認する。


「これの次のページだね」


智香が言い、手のひらの汗を拭った。


ここまで走ってきたせいもあるけれど、緊張で手のひらに汗がじっとりと滲んでくるのだ。


「あぁ」


裕貴も緊張しているようで、なかなかページをめくろうとしない。


すでに読んだページをもう1度隅々まで目を通していき、やがてすべてを読み終えた。


「いくぞ」


覚悟を決めるように呟いてページをめくる。


果たしてそこにおめあのページが見つかった。


資料館では破り捨てられ、黒く塗られるなどしてどうしても隠されていた歴史だ。


『昭和13年は大虐殺の年』


一番上に大きく書かれたその見出しに裕貴はめまいを覚えた。


それは自分たちが予想していた次の展開とは大幅に違うものだった。


前のページで触れられていた不作の影響から祭りができたという内容を待っていたのに、全く違うものがそこには書かれていたのだ。


「大虐殺?」

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