オフクロサマ
「そうだな。でもこの資料でもこれ以上のことは書かれてない。犯人について触れられてないんだ」


どれだけページをめくってみても事件の詳細は書かれていない。


それでもそのページを破り捨ててしまうほどに、この事件はミチ村ではタブーをされているのだろう。


ネットで調べてみてもやはり有力な手がかりは得られなかった。


「ここで終わるなんて嫌だよ」


「あぁ、俺も嫌だ。きっとこの村中を探せばもう少しなにか見つかるはずだ。ここはミチ村10人殺しの舞台になった場所なんだからな」


どれだけ隠そうとしても歴史を完全に覆い尽くしてしまうことはできない。


時間が経って風化してしまうような歴史ではないのだから、人々に受け継がれているはずだ。


それこそ津山30人殺しのように被害者たちの石碑などが残っていてもおかしくはない。



犯人のための石碑などは用意されていなくても、被害者を思う気持ちはこの村にだってあるはずだ。


「行こう。この村を隅々まで調べるんだ」


太陽は頭上高くに上がり始めて気温は肌を焦がすように熱い。


しかし今のふたりにそんなことは関係なかった。



空のペットボトルに冷たい水を入れて用意し、再びでかけたのだった。
< 139 / 220 >

この作品をシェア

pagetop