オフクロサマ
緑と芝生に囲まれた、見晴らしのいい場所に仏様たちは眠っているのだ。


それに比べるとここの霊園は随分と湿っていて、人々が寄り付きにくい場所にあるみたいだ。


「地図上ではそうなってたけど、あの地図も古いから本当かどうかわからないよな」


歩いても歩いてもそれらしい場所を見つけることができなくて、裕貴も少し自信がなくなってきていた。


資料館は地図の通りにあったけれど、あれも随分と古い学校がそのまま使われていた。


地図上に記されている建物が今でも同じ場所にあるとは限らない。


「少し休憩しようか」


ここへ来るまでに1時間は歩いただろうか。


ふたりはすでにクタクタで、喉は焼けるように乾いていた。


獣道の途中でベンチもなにもない中、ふたりは太い木の根に座って休憩することにした。


「山の中はもっと涼しいと思ってた」


根っこに座り込んで靴を脱ぎ、足裏をマッサージしながら智香が言った。


「動かなければきっと涼しいんだろうけどな」


裕貴は持参してきた水を一気に半分ほど飲んでようやく一息ついた。


獣道はまだ上へ上へと続いていて、先が見えない。

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