オフクロサマ
この奥に本当に霊園なんてあるんだろうか?


もう少し進んでなにもなければ引き返したほうがいいかもしれない。


道は一本道で迷子になることはないけれど、もっと村の中心部で安全にヒントを得ることができないだろうか。


自分ひとりなら気にせずにどんどん進んでいくが、今は智香が一緒にいる。


どうしても考え方が保守的になってしまうのだ。


「裕貴は足大丈夫?」


「あぁ、俺は平気」


学校ではサッカー部に入部している裕貴は、毎日のトレーニングのおかげで随分足腰が強くなっていた。


これくらいの山道はどうってことない。


「じゃあ、そろそろ行こうか」


足のマッサージを終えた智香が自分から立ち上がった。


てっきり弱音を吐くかと思っていたので、裕貴は驚いて智香を見つめた。


「唯たちは今でも恐怖と戦ってるんだもん。こんなところで立ち止まってるわけには行かないよね」


その言葉に嬉しくてつい笑顔になってしまう。


智香自分と同じ気持ちでいてくれたのだ。


自分たちよりも唯や真一のほうがよほど辛い目にあっている。


それを友人である自分たちが支えるのは当然のことだった。
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