オフクロサマ
「熱中症にかからなくても、食べ物も飲み物もなくていずれ死ぬってわけか」


裕貴はようやく智香から体を離した。


村人たちが本当に自分たちを殺すつもりなら、随分とまずい状況になってしまったようだ。


でもそれは自分たちがあの祭りの真相に近づきつつあるということでもある。


あの石碑が最大のヒントだったんだろう。


「オフクロサマはフクロダキのことで正しかったんだ」


村人がここまでするということは、きっとそうに違いない。


「私もそう思う。だけど、このままじゃなにもできずに死んじゃうよ」


真一や唯だけじゃない。


今や自分たちの命すら危うい状況にある。


裕貴は公会堂の奥にあるロッカーへと向かった。


ここを貸してもらうときに掃除道具を取り出したロッカーだ。


中を確認してみると雑巾とバケツ、モップやホウキがそのままにされていた。


どうやらここは確認しなかったみたいだ。


裕貴は窓から外の様子を確認した。


空は随分暗くなっていて、周囲の様子を確認することができない。


だけどたしか窓の下には水道があったはずだ。


「よし、一か八かやってみるか」

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