オフクロサマ
ハッと息を飲んだ裕貴が指先に力を込めてモップを動かした。


蛇口がキュッと動く音がして、水が吹き出す音が聞こえてくる。


「やった! 成功だ!」


裕貴が叫ぶと同時に智香が上着を脱いだ。


それをホウキの先端にくくりつけて裕貴に渡す。


裕貴はそれを窓から差し出して下におろして行き、蛇口付近で止めた。


水の出る音が不規則になり、服に染み込んだ分だけ重たくなる。


「いいぞ。上げるぞ」


「うん!」


ホウキを引き上げると智香がバケツで服を受け止めた。


服には十分に水が染み込んでいて滴り落ちている。


「よし、成功だ!」


喉がカラカラに乾いていたふたりは貪るように服に吸い付いた。


少し衣類の香りがする水だけれど、十分新鮮で美味しさを感じる。


水を確保できればある程度の熱さにも耐えることができる。


これは大きな収穫だった。


村人たちが本当に自分たちを殺すつもりなのかはわからない。


だけど絶対に負けない。


負けてたまるか!
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