オフクロサマ
そんなフクロダキを見ていても村人たちは誰も声をかけなかった。


この村の中でも圧倒的に少ない給料の中でフクロダキは食べていくだけで精一杯だった。


身を綺麗にすることは二の次、さんの次となり、どんどん醜くなっていく。


いっそのこと村から出ていってくれたらいいのにと影口をたたく人もいたが、それは本人には伝えられないことだった。


だって、フクロダキの顔には醜いやけどのあとがある。


あれを残してしまったのはミチ村の人たちで、フクロダキはあれがある限りまともな職につくことはできないだろうと、誰もがわかっていたからだった。


そうしてつつましい生活を続けていたとき、ふいに1人の子供がフクロダキに近づいてきた。


フクロダキはそのときちょうど河原で火を起こして朝ごはんの準備をしているところだった。


男の子は好奇心と恐怖心がないまぜになった顔でフクダキに声をかけた。


「これ、お母さんが」


そう言って突き出してきて手にはおにぎりの包まれた笹が乗っかっていた。

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