オフクロサマ
フクロダキはおずおずとそれを受け取り、男の子へ視線を向けたが、男の子はそれ以上なにも言わずに逃げ出してしまった。


名前も住所も言わなかったけれど、この村の中で知らない者同士はいない。


あれはフクロダキを助けてくれた女性の子供で間違いなかった。


そのとき、フクロダキに初めて恋心が芽生えたのだ。


フクロダキがひとりぼっちになって10年が経過した、19歳の頃のことだった。

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