オフクロサマ
フクロダキにはわからなかった。


なぜ自分が牢屋のような場所に閉じ込められてしまったのか。


鉄格子状になったドアの前にべったりと張り付いた男はなぜ桑を握り締めてこちらを睨みつけているのか。


わからなかったが、猛烈な怒りを感じていた。


今までこの村にされてきた仕打ちが走馬灯のように駆け巡り、体中に怒りの炎が燃えたぎった。


「ああああああ！！」


獣のような咆哮に驚いて見張りの男が油断した。


力が抜けたことを見抜いたフクロダキは相手から桑をもぎ取ると、躊躇なくそれで相手の頭をかち割った。


桑が突き刺さったままドサリとその場に倒れ込む。


格子の間から手を出して男の腰に下がっている鍵を捕ると、難なく牢屋から脱出することができた。


もともと本格的な牢獄なんてない村だ。


罪人の足をいっとき止めておくことしかできない設備しかない。


フクロダキは倒れた男の頭部から桑を引き抜くと、ドロリと血が流れ出した。


桑の先端には破損した脳みそがこびりついていたが、気にならなかった。
< 183 / 220 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop