オフクロサマ
安喜くんは自分の考えを挟んだ。


不作が続いていた時代に罪人にざわざわ飯を詰め込むようなことはしなかっただろうと、智香も感じた。


「動けなくなたフクロダキは山の中にあるガケから突き落とされたんだ。死ぬほどのガケじゃなかったけれど、腹一杯に詰め込まれたフクロダキはそこから這い上がってくることができなかった」


「ひどいな」


いくら罪人と言っても、あまりにも残酷だ。


フクロダキの人生を振り返ってみても、情状酌量の余地はあったんじゃないかと思う。


「そう、ひどいよね。だから村人たちはフクロダキが戻ってきてまた虐殺することを恐れた。そうならないために、祭りを作ったんだ。オフクロサンにフクロダキの魂をのり移させて、自分にされたことと同じことを人形に行う。そうすることで魂を鎮めようとしてるんだ」


そういうことだったんだ。


ようやく祭りの全容が見えてきた。


「その祭りのときに本物のフクロダキの魂が降りてきていた。だから、音を立てるなという禁忌を破った人間を殺して回ってるんだな」


憎しみを持ったまま死んだフクロダキなら、そのくらいのことはしそうだ。
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