オフクロサマ
「うん。万が一音を立ててしまってもフクロダキに顔をバラさなければいいって言われているから、みんな仮面をつけてるんだよ。でもそれは無駄なんだ。フクロダキは相手の顔がわからなくてもかならず居場所を突き止めて追いかけてくるから」


「音を立てちゃいけないっていうのは?」


「フクロダキの無理やり土や石を食べさせていたとき、村人たちはみんな無言だったんだって。きっと必死だったからだろうね。誰もなにも言わずにただフクロダキに無理やり食べさせ続けたんだ。それが発端だと思う」


「今の話が本当なら、フクロダキはここに戻ってきてるってことだな?」


裕貴の質問に安喜くんは頷いた。


「うん。お祭りは昨日で終わったけれど、禁忌を犯した人間を全員殺さないと帰らないはず。今までもそうだったから」


安喜くんは目を伏せて言った。


今までも禁忌を犯して死んでいった人間がいるのだろう。


「それならフクロダキに謝って許してもらったらどうかな?」


「ちょっとの物音を聞き逃さずに殺してしまうフクロダキが謝罪を受け入れてあの世に帰ると思うか?」


そう言われるとなにも言えなくなってしまう。

< 186 / 220 >

この作品をシェア

pagetop