オフクロサマ
☆☆☆

1時間ほど泳いだ後休憩を入れるための笛が鳴り響いた。


この音が鳴ると今入水したばかりの人でもひとまずプールから出ないといけない。


その間客たちは休憩し、係員たちは水中に異変がないか確認の作業をする。


「もう少し練習したいよ」


水からあがった陽太からさっそく苦情がでた。


「15分休憩したらまた練習できるぞ。その間にジュースでも飲むか」


裕貴の言葉に現金にもすぐに機嫌が戻っている。


ジューススタンドなんてオシャレなものはないけれど、休憩スペースに自販機がある。


「それなら私がおごってあげるよ」


「え、それは悪いよ」


「ダメだよ。ここの入場料は裕貴が出してくれたんだから」


早口にそう言うと智香は女子更衣室へと戻って行った。


中には貴重品をベンチに置いていく人もいるけれど、智香たちにはそこまでの勇気はなかった。


ロッカーまで戻り、腕につけた鍵でドアを開けた時カバンの中でスマホが鳴っているのが聞こえてきた。


タオルで簡単に手の水分を拭き取りカバンの中から白いスマホを取り出して画面を確認してみると、唯からの着信だった。
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