オフクロサマ
なんとしてもフクロダキの亡骸を発見して、供養してやりたい。


津山30人殺しの都井睦雄だってちゃんとした墓が用意されたのに、フクロダキにはそれがないのはおかしかった。


「山の下と上でこんなに大きな事件が立て続けに起きてたなんて、知らなかったね」


裕貴の後ろを歩く智香が暗い声で呟いた。


無言で歩きながらもずっと事件について考えていたんだろう。


「確か、都井睦雄の事件も村八分とかが原因だったよな」


高校に入学してすぐの頃、歴史好きな真一に進められて津山30人殺しの本を読んだことがある。


都井睦雄もまた村八分にされた暗い過去がある。


真一もまた、あの頃からこの周辺の歴史について深く興味を持っていたんだろう。


「そうだね。昔はどこも同じようなものだったんだろうけれど、心が痛むよね」


フクロダキは元の親に捨てられているし、手に奇形があることを白い目で見られてもいた。


フクロダキを拾った家族は必死で守ろうとしたけれど、それは裏目に出た。


フクロダキを外の世界と切り離してしまったことで、フクロダキの心の成長が泊まってしまったのだ。

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