オフクロサマ
本来なら培われるはずだった、他者との関わり合い方が完全にわからなくなった。


ずっと閉じ込められていたことで口数も減り、子供特有の明るさは消え去った。


もちろん、家族はフクロダキをそんな風にしたかったんじゃないと理解している。


ただ守りたかった。


それだけだったに違いない。


昔の狭い集落は時として残酷でもあったから、そこからフクロダキを遠ざけたかった。


だけど、結果的にフクロダキが救出されたときにはすでに他者との関わりが困難な性格になってしまっていた。


そこからどうにか仕事を始めていることから、きっとフクロダキはある程度のコミニュケーションが取れるようになっていたんだろう。


現に、フクロダキを雇っていた人は仕事から引退するときにフクロダキのことをひどく心配していたようだし。


村の人たちもみんながフクロダキのことを理解していたなら問題はなかったのかもしれない。


親に捨てられた不幸な身の上だと認識していただけなら、問題はなかったのかもしれない。


しかし、フクロダキには6本目の指があった。
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