オフクロサマ
☆☆☆

匂いを頼りに進んで行くと、山道から外れて道なき道を進んでいくことになった。


帰り道がわかるように時折木の枝を折って目印にした。


「こんなところになにがあるの?」


奥深い山の中まで入ってきたことで智香の不安は膨らんでいる。


「大丈夫。きっとすぐになにか見つかるはずだから」


安心させるためにそう答えたときだった。


不意に目の前の地面がなくなってガケが現れたのだ。


「うわっ!?」


咄嗟に足を止めて崖下を覗き込む。


5メートルほどはあるだろうか。


落ちても腐葉土によって支えられるが、無傷では済まない高さだ。


「ここって……」


隣に立った智香が愕然とした様子で呟いた。


異臭は強く鼻腔を刺激して、吐き気がする。


崖下には無数の人形が打ち捨てられ、その腹部から腐敗した食べ物が出てきているのだ。


「祭りで使われてた人形だ。最後にはここに捨てられてたんだな」


裕貴は指先で鼻を摘んで答える。


まともに呼吸をすると腐敗臭を吸い込んでしまい、本当に吐いてしまいそうだった。


「ってことは、この下にフクロダキがいるってこと?」

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