オフクロサマ
ゆっくりゆっくり、蔦が途中でちぎれないように慎重に進んでいく。


両手に汗が滲んで何度も手が滑りそうに名ある。


そのたびに智香の心臓はドクンッ! と痛みを感じるほどに跳ねた。


たった5メートルの高さが延々に続くように感じられたとき、ようやく両足が地面を踏んだ。


ホッとして蔦から手を離すとすぐに裕貴もおりてきた。


さっき人形を見た場所まで移動してくると更にひどい異臭が鼻腔を刺激する。


どうにか吐き気を飲み込んで人形を見つめた。


何体分の人形がここに捨てられてきたのか検討もつかない。


1年のうち7日間が祭りになるから、年に7体の人形が捨てられていることになる。


目の前の光景はそれだけの量の人形が折り重なり、腐敗し、悪臭を放っている状態だった。


下のほうの人形など、きっともう土に戻っているだろう。


「あそこから落ちたとしたら、まっすぐにこの辺りに落ちるかな」
上を見上げて落下地点を予測する。


ちょうど人形が折重っているあたりに落下してくるはずだ。


ただ、フクロダキがそのときに死んだかどうかはわからない。

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