オフクロサマ
昨日のことはずっと気になっていたので、すぐに電話に出た。


「もしもし？」


電話に出たときの挨拶もなく、唯から焦った様子が伝わってきた。


相当慌てているようでなにを言っているのかよくわからない。


「唯、どうしたの？」


なだめるような声でそう聞くとようやく電話の向こうで唯が泣いているらしいことが伝わってきた。


智香はスマホを握り締め直す。


「唯？」


『どうしよう智香、真弓と宏が……！』


叫ぶようにそう言ったきり次の言葉を次ぐことができずに泣きじゃくる。


あのふたりになにかあったことだけは明白だった。


「落ち着いて唯。ふたりがどうしたの？」


『ふたりが……ふたりが交通事故にあったって！』


叫ぶ唯に智香まで悲鳴を上げてしまいそうになり、慌てて手で口を覆った。


「事故？　どこで？　唯はどこにいるの？」


しかし、それから先はまた要領を得なくなった。


友人ふたりが事故にあったということで混乱しているのはわかる。


けれど、唯の泣きじゃくる様子は少し普通ではなかった。


それほど深刻な状況なのかもしれない。
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