オフクロサマ
『実はさっきから視線を感じるんだ』


沈黙をやぶったのは真一だった。


その声は怯えたものに変わっている。


「視線?」


『あぁ。視線だけじゃない。俺しかいない家の中から物音も聞こえてくるんだ』


「ダメだ真一。絶対に確認しに行くなよ」


『でも、本当に誰かがいるんだよ!』


まずい、真一の声はだんだんパニックになってきている。


早くフクロダキの骨を見つけないと!


裕貴は右手でスマホを持ったまま左手で土を掘り返し始めた。


ここで電話を切ってしまうと、真一はなにをしでかすかわからない。


『なぁ裕貴、俺の家になにがいるんだよ? 教えてくれよ!』


「落ち着け真一。誰もいない。お前ひとりしかいないんだよ」


『嘘だ!!! どうして俺に隠し事するんだよ? 本当はもうなにか掴んでるんだろ!?』


真一の叫び声に鼓膜がキンッと震える。


裕貴は軽く顔をしかめて覚悟を決めた。


「……あぁ。わかったことがある」


その言葉に真一が絶句した。


荒い呼吸音だけが電話の向こうから聞こえてくる。

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