オフクロサマ
ふたりが同じ場所を両手で掘り返し始めたとき、電話の向こうで真一は限界を迎えていた。


ガタガタと体を震わせて部屋の中を見回す。


見慣れたはずの部屋が今は異質な空間にみえてしまう。


そのとき、ガタンッ! と隣の部屋から大きな物音がした。


「ひっ!」


小さく悲鳴を上げて壁に視線を向ける。


さっきまではもっと遠くから聞こえてきていた物音が、どんどん近づいてきているのだ。


来る……!


強い気配を感じた瞬間全身が泡立っていた。


ぞわぞわとした不快な感覚が足先から脳天へと突き上げていく。


ドンッ!


ドアではなく、窓を強い力で叩かれた音が響いた。


その音に咄嗟に真一は立ち上がっていた。


裕貴は家から出るなと言ったけれど、もう限界だった。


これ以上ここで待っているわけにはいかない。


もうすぐアレが来てしまう……!


真一はスマホを握り締めて駆け出した。


部屋を飛び出して階段を駆け下り、素足のままで外に飛び出す。


丁度花壇に水やりをしていた隣人が驚いた顔をこちらへ向けた。


それも無視して走り出す。


『真一聞こえるか? 大丈夫か?』
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