オフクロサマ
村のことをひた隠しにしていたのに、こうしてテレビに写っているとはどういうことだろう?


裕貴は身を乗り出してスマホを見つめた。


『ただいま私は廃村になったと言われていた岡山県ミチ村に来ています。しかしここには複数の集落が残っており、更にはここで昨晩10人の村人たちが不審死をとげました』


ニュースキャスターの声に全身から血の気が引いていく。


10人の不審死……?


10人という数はミチ村にいるときに嫌というほど見てきた。


それはフクロダキが虐殺した村人の人数と一致している。


智香は口の中からカラカラに乾いていくのを感じていた。


何度水を飲んでもそれは無意味な気がした。


画面上でカメラに向かって男性が近づいてくるのが見えた。


それは大田だった。


大田の目は吊り上がって充血し、目の下にはどす黒いクマができている。


初めて出会ったときとは人相が変わり過ぎていて一瞬誰なのかわからなかったほどだ。


大田はカメラを見つめていた。


だけどその目はレンズを通り越して、智香と裕貴のふたりを見ているように感じられた。
< 219 / 220 >

この作品をシェア

pagetop