オフクロサマ
すべて裕貴にまかせてしまいたいという気持ちもあるけれど、こんなときには協力しあわないといけない。


「藤下宏さんは残念ながら……」


看護師はそこで言葉を切り、うつむいた。


それは想像を超える最悪の自体だった。


智香は言葉の意味を理解しながらも全く頭がついていかなかった。


残念ながら、なに?


全部最後まで言ってくれないとわからない。


しかし看護師はそれだけ伝えると自分の役目は終わったというように持ち場へと戻っていってしまった。


取り残された3人は呆然と立ち尽くす。


陽太ですら、ことの重大さを理解したようにその場に硬直していた。


「智香!」


声をかけられなければ永遠にここに突っ立っていたかもしれない。


聞き慣れた唯の声に呼ばれて智香はようやく時間が動き出した。


「唯!」


駆け寄ってくる唯の顔色は真っ青で、今にも倒れてしまいそうだ。


「そこのベンチに座って話そう」


以外にもしっかりした声の唯に促されて3人は廊下奥にあるベンチへと向かったのだった。
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