オフクロサマ
☆☆☆
真弓と宏は同じ場所で事故にあったのだと思っていた。
たとえば車にひかれそうになった真弓を宏が助けようとして、ふたりとも巻き込まれてしまったとか。
だけど実際はそうじゃなかった。
「同じ時間に、別々の場所で?」
裕貴が眉間にシワを寄せて唯に聞き返す。
唯はゴクリと唾を飲み込んで頷く。
「そう。真弓は信号無視の車にはねられて、宏は踏切内に取り残されて電車とぶつかって……」
想像するだけで気分が悪くなってくる。
とくに宏は踏切のある線路内で自転車のタイヤが挟まって動けなくなったらしい。
それなら自転車を置いて逃げ出せばいいのに、なぜかそうしなかった。
ギリギリまで自転車を動かそうとした宏は直前になって思い出したように逃げ出し、背中を電車に強くぶつけられてほぼ即死だったそうだ。
「宏はどうして線路から逃げ出さなかったんだ?」
裕貴が震える声で訪ねた。
真弓は左右に首をふる。
その場面になってみないとわからないけれど、線路に挟まってしまったことで混乱して正常な判断ができなくなっていたのかもしれない。
真弓と宏は同じ場所で事故にあったのだと思っていた。
たとえば車にひかれそうになった真弓を宏が助けようとして、ふたりとも巻き込まれてしまったとか。
だけど実際はそうじゃなかった。
「同じ時間に、別々の場所で?」
裕貴が眉間にシワを寄せて唯に聞き返す。
唯はゴクリと唾を飲み込んで頷く。
「そう。真弓は信号無視の車にはねられて、宏は踏切内に取り残されて電車とぶつかって……」
想像するだけで気分が悪くなってくる。
とくに宏は踏切のある線路内で自転車のタイヤが挟まって動けなくなったらしい。
それなら自転車を置いて逃げ出せばいいのに、なぜかそうしなかった。
ギリギリまで自転車を動かそうとした宏は直前になって思い出したように逃げ出し、背中を電車に強くぶつけられてほぼ即死だったそうだ。
「宏はどうして線路から逃げ出さなかったんだ?」
裕貴が震える声で訪ねた。
真弓は左右に首をふる。
その場面になってみないとわからないけれど、線路に挟まってしまったことで混乱して正常な判断ができなくなっていたのかもしれない。