オフクロサマ
「わからなかったって。なにから逃げているのか確認してみても、そこにはなにもないし、誰の姿もなかった。ただ真弓も宏もひとりで怯えて逃げていて、事故に遭ったんだって」


それは一体どういうことだろう？


事故の内容からすれば誰にでも起こりうるような内容だ。


自動車の信号無視に自転車が線路から動かなくなったこと。


しかしふたりはなにかから逃げているようにも見えたという。


もしかしたらそれがなければふたりはもっと冷静に動くことができていたのかもしれない。


「別々の場所で同じ時間になにかに追われてそのまま死んだ！　偶然だと思うか？」


真一が唾を飛ばして怒鳴る。


大きな声は静かな院内に響き渡りこだまする。


「真一、少し落ち着いて」


唯が真一をなだめようとするが、真一は血走った目で唯を睨みつけ、手を振り払った。


「お前はなにもわかってない。今俺たちがどうなっているのか、わかってない！」


「それってどういうことだ？　俺たちっていうのは、ここにいる全員のことか？」


裕貴が冷静に質問をするが、それに対して真一は歪んだ笑みを見せるだけだった。

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