オフクロサマ
☆☆☆

「智香、大丈夫か？」


裕貴に肩を揺さぶられるまで智香の悪夢は終わらなかった。


目が覚めた瞬間全身にじっとりと汗をかいていることにきがつき、その不快感に顔をしかめる。


「もうすぐ降りるからな」


そう言われて外を確認すると青い空が見えた。


自分たちを歓迎しているかのように雲ひとつない。


智香は手のひらで額の汗をぬぐい、軽く身震いをした。


もうすぐ岡山に到着する。


そこで自分たちはなにを見ることになるだろう。


不安は大きく膨らんで、智香のことを今にも押しつぶしてしまいそうだ。


そんな智香を心配して裕貴が色々と話しかけてくれたけれど、ろくに話が頭にないってこないまま岡山駅に到着していた。


外へ出た瞬間東京とは違う空気を感じる。


行き交う人々の波に乗って改札を抜けると駅の中にはお土産物屋が並んでいた。


他にも電車や新幹線の中で食べられるお弁当や、お店がずらりと並ぶ。


その区画だけはガラス壁で通路と隔たれているため、匂いが流れ出てくることはなかった。


「結構人が多いな」


裕貴が驚いた声を上げる。

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