オフクロサマ
それからふたりは駅から出ているめぐりんという緑色のバスに乗り、県庁通り前で下車をした。


「この辺は観光地が多いみたいだな」


地図を見ながら裕貴がつぶやく。


スマホ画面を横から覗き込んでみると、美術館や博物館もこの付近にあることがわかった。


どうりでバスの中も人が多いはずだ。


駅から県庁通りまでバスで出れば、後は徒歩圏内でどこへでも行くことができる。


こうして歩いている間にも、同じように大きな荷物を持った人たちと通りすがることが多かった。


目的の図書館に到着して中に入ると静かなBGMが流れていて心地良い空間が演出されている。


木製の長テーブルは温かみがあり、体を包み込んでくれる椅子はひとつひとつがいいクッションを使ったものだとわかる。


ふたりは岡山の郷土資料の棚へと向かった。


天井につきそうなほど高い本棚が5つ横並びに並んでいて、それぞれに岡山の食だったり、産業だったりといったテーマがつけられている。


その中でひと際目を引くのが岡山のオカルトと題された棚だった。


ふたりの足は自然とその棚の前で止まった。

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