オフクロサマ
お祭りのときにはひとりの村人が選ばれて、その人に神様が憑依してゴーサマと呼ばれる存在になる。


ゴーサマとなった村人は、村の様子を見回るための『お遊び』を始める。


その『お遊び』を邪魔した人間は3年以内に死ぬと言われている。


「3年以内に死ぬ?」


裕貴も同じ場所を読んでいたようで怪訝そうな声を上げた。


どうやらゴーサマの邪魔をした人間が後日死んだということが本当にあったらしい。


だけど祭りから3年も経過していたら因果関係があるのかどうかわからない。


護法祭は有名な祭りのようだし、人々が面白がっておひれをつけた可能性が高い。


「借りに宏たちがこの祭りに参加していたとしても、ちょっとおかしいくらい怯えてるよね?」


自分だったらあそこまで怯えることはない。


ゴーサマの言い伝えはたしかに怖いけれど、本当に死ぬ可能性は低いと捉えるだろう。


「とにかく、この久米町ってところへ行ってみよう」


「そうだね」


せっかくここまで来たのだから近くを観光したい気持ちもあったけれど、智香はそれを押し込めて頷いたのだった。

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