オフクロサマ
真弓は長い黒髪をひとつに束ねていつも血色のいい顔つきをしている。


しかし今は束ねた髪の毛はボサボサに跳ねて目の下には黒いクマができているのだ。


こころなしか生気まで吸い取られてしまったように見える。


夜行バスでの旅行がしんどかったんだろうか？


そう思って他の３人に視線をやると、３人も同様に生気を失ってしまったような表情でただそこに座っているだけだ。


事前にここで待ち合わせすることを約束していたから、そのとおりにやってきただけ。


そんな感じがする。


体はここにあっても、４人の心はここにはない。


智香と裕貴は目を見交わせた。


友人らのこれほど破棄のない様子は今まで一度も見たことがなかった。


この４人組はいつても元気いっぱいで、学校内でもうるさいくらいの存在だ。


「と、とにかくなにか注文する？　お腹へってるでしょう？」


智香が気を利かせて４人の前にメニュー表を置く。


４人は虚ろな視線をそれに向けて、見ているのかどうかもわからない。


「ねぇ、本当になにがあったの？」


ここまで元気のない４人を見ているとさすがに不安になってくる。
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