オフクロサマ


☆☆☆

翌日は悪夢を見ることもなく心地よく目覚めることができた。


布団の中で大きく伸びをして息を吸い込むと都会とは違う、新鮮な空気の味がする。


ふと顔を上げてみると智香よりも先に起きていた裕貴が窓を開けていた。


「気持ちいいね」


「あぁ。川が近いから余計に清々しい気分になる」


窓辺に近づき胸いっぱいに朝の空気を吸い込むと、ようやくハッキリと目がさめた。


朝食は7時半にお願いしてあるが、まだ30分ある。


「少し外を散歩しようか」


裕貴からの提案を断る理由はどこにもなかった。


早朝の河川敷を歩くと冷えた空気に少し咳き込んだ。


だけど体の中から清涼感が溢れ出してくるようで心地良い。


「気持ちいいところだね」


「あぁ。普通に観光として来ていたら最高だったろうな」


「今度また来るとしたら春がいいな」


智香の意見に裕貴は頷いて賛成した。


河川敷から桜の気を見上げてみると、枝がトンネルのように続いている。


きっと、桜の季節になると川には桜の絨毯ができて、空には桜のトンネルができるのだろう。

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