オフクロサマ
河川敷に桜を植えている場所は数あるけれど、ここは是非見てみた居場所のひとつになりそうだ。


ふたり肩を並べて歩いていると裕貴のスマホが震えた。


「ごめん」


立ち止まり、画面を確認した裕貴は一瞬にして表情が険しくなった。


「電話? 誰から?」


「真一だ」


朝食を終えたらこちらから電話をするつもりでいたけれど、相手のほうが気になってかけてきたようだ。


それだけ真一と唯が切羽詰まった状態であることが理解できる。


「もしもし?」


『裕貴、なんで連絡くれないんだよ!』


真一の声は隣にいる智香にまで聞こえてきた。


裕貴は咄嗟にスマホを耳から離してスピーカーに切り替えた。


そうしないと自分の鼓膜がやられてしまいそうだった。


「悪い。昨日はもう遅い時間だったんだ」


『何時でもいいから連絡してくれよ! こっちは明日死ぬかもしれないんだぞ!』


普段温厚で、頭のいい真一からは考えられない汚い言葉に友香は目を見開く。


裕貴もとまどっていはいたが、今はそれどころではない。

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