オフクロサマ
「俺はこれからその村を探しに行ってくる。でも智香はここで待っていればいい。もし俺の帰りが遅かった時にはもう一泊できるかどうかも、聞いておいてやるから」


それは智香にとって願ってもいない申し出だった。


できればその言葉に甘えたい。


ここで裕貴が戻ってくるのを待っていたい。


喉まで出かかった言葉だけれど、智香はそれをどうにか飲み込んだ。


青ざめて怯えている唯の顔をお思い出す。


自分は友人たちを助けたくてここに来たはずだ。


今更怯えて逃げるなんてことしたくなかった。


「大丈夫。私も一緒にいく」


智香は意を決してそう言ったのだった。

< 64 / 220 >

この作品をシェア

pagetop