オフクロサマ
ミチ村
車両立入禁止の看板から真っ直ぐに山道は続いていく。


一応コンクリートで固められているものの、車両が通らないためか足元は悪い。


木々の枝が行くてを遮り地面に落ちた草木は朝露にぬれて滑りやすい。


こんな道を誰かが歩いているとは思えなかった。


「ミチ村の人たちって生活はどうしてるんだろうね」


歩きながら智香が素朴な疑問を口にした。


こんな山の中の村で、自動車も使えないんじゃ不便なはずだ。


「だから廃村になったんじゃないか？」


ネット情報を思い出して裕貴は答える。


ネットではミチ村は今から３０年前に廃村になったと書かれていた。


理由はあまりに奥深い場所にあるため、人がいつかなくなってしまったという、よくあることだった。


ミチ村に居た人たちは近くの加茂町や、津山市の市街地に移り住んでいったようだ。


それまではミチ村にも産業があり、木や川魚といったもので生計を立てることができていたらしい。


「もう随分歩いたよね」


ずっと坂道が続いているので智香の息が上がってきていた。


山の中で涼しいと言っても背中にはじわじわと汗をかき始めている。

< 72 / 220 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop