オフクロサマ
☆☆☆

最初の民家が見えて行きたのは村に入って５分ほど歩いたときのことだった。


白壁にオレンジ色の屋根、茶色い戸をした小さな一軒家だ。


「オレンジ色の屋根なんて珍しいね」


智香がつぶやくと裕貴が「ここではそうでもないみたいだけどな」と、答えた。


視線を向けると村のいたる場所にオレンジ色の屋根が見える。


どうやらこの村ではオレンジ色の屋根と白壁の家が主流になっていたみたいだ。


それにしてもどの家も綺麗だ。


人がいないなんて嘘みたい。


「ここって本当に廃村なのかな？」


疑問をそのまま口にしたとき、不意に後ろから足音が聞こえてきてふたりは振り向いた。


そこには黒いTシャツにジーンズ姿の男性が立っていて、顔はよく日焼けしていた。


「ミチ村は廃村なんかじゃないよ」


突然現れた人にたじろぎながらもふたりは目配せをした。


男性はニコニコと笑顔を浮かべていて愛想がいい。


この村の人なのかもしれない。


「あ、あの、あなたは……？」
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