オフクロサマ
「ごめんね、今日は来てないの」


友香の言葉に安喜くんは心底残念そうな声を漏らす。


こんな可愛い子がいるのに、薬物なんて……。


ううん、わからない。


どんな人でも実は危ない人っていうのはいくらでもいる。


この村に入って一番最初に出会ったのが偶然大田さんといういい人だったからって、決めつけてかかっちゃいけない。


「それにしても、泊まる場所がないのはまずいな。残念ながら村の中には宿泊施設はないんだ」


思っていた通りの言葉に裕貴と智香は落胆してしまう。


まさかこのまま大田さんの家に泊まるなんておこがましいこともできない。


一旦山を降りてまた夜に戻ってくるような体力も残っていない。


どこか雨風だけでも防げる場所があれば助かるのだけれど……。


そう思っていると、大田さんがなにかひらめいたように表情を明るくして「ちょっと待ってて」と告げるとスマホを片手にリビングを出ていった。


「唯たちはどこに泊まったんだろうね」


「聞いてみればよかったな」


そんな会話をしていると安喜くんが近づいてきた。


「ねぇ、お姉ちゃんとお兄ちゃんも僕と遊んでくれる？」
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