オフクロサマ
自分たちでデマを流しているのだから、怒る必要なんてない。


「ミチ村には隠したいなにかがある。そんな場所にいても大丈夫なのかな」


不意に智香の体に寒気が走った。


もしかして自分たちは踏み込んではいけない場所に踏み込んでしまったんじゃないか。


このまま、この村から出ることはできないんじゃないか?


一瞬にしてそんな不安が膨らんでいく。


「俺が一緒だ。きっと大丈夫だから」


裕貴に手を握り締められて安心すると急に眠気が出てきた。


日中ここまで歩いてきた疲れがどっとでてきたのだ。


「少し寝ようかな」


あくびしながら言うと裕貴はすでにうつらうつらし始めている。


大田さんが貸してくれた布団を敷いてその上に横になると、ふたりはすぐ眠りに落ちていったのだった。
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