オフクロサマ
「うん。前はちゃんとお面をつけてたんだけど、お面をつけていてもどこの誰だかわかっちゃうらしくて、それからお面を持ってるだけでもいいってことになったんだって」


安喜くんはイチゴ飴に夢中になりながら説明をした。


「どこの誰だかわからなくするためにお面をつけるのか?」


裕貴の言葉に安喜くんは微笑んだ。


「当たり前じゃん」


その返事には違和感があった。


お祭りの時にどこのだれだかわからないようにお面をつける。


それはどうしてだろう?


疑問に感じたとき、安喜くんへ向けて手をふる男の子たちがいた。


「安喜ー! 一緒に遊ぼうぜ!」


手を振る男の子たちを見て安喜くんの表情がパッと晴れる。


それから悩むように智香たちと男の子たちを交互に見た。


「安喜くん、友達と遊んでおいでよ。私達はお祭りを楽しんでるから大丈夫だよ」


「本当? ありがとう!」


少し気にした様子を残しつつも、安喜くんはイチゴ飴を握り締めて友人らのもとへと駆け寄っていった。


「いい子だよな、安喜くん」


その姿を見つめて裕貴がつぶやく。
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