オフクロサマ
肉や内蔵が手縫いされたもので作られているのだ。


ズルズルと内蔵を引き出して、それを自分の傍らに置いた男は今度はその手で茶碗を手にとった。


茶碗の中には半分ほどお米が入れられていて、男はそれを人形の腹部にねじ込んだのだ。


「オフクロサマ!」


次はおつわんに入ってる味噌汁を人形の腹部に詰める。


そしてまた米、汁、米、汁。


続けていくとあっという間に人形の腹部はパンパンになってしまった。


「オフクロサマ!」


食べ物で満たされた人形の腹部に男は取り出した内臓を戻していく。


布と綿で作られた内臓はお味噌汁を吸って茶色く変色しながら、腹部に押し込められていく。


「オフクロサマ!」


何度も叫ばれるその言葉に智香の耳はジンジンと熱を持ってきていた。


体にズシンッと響く声に加わり、目の前の異様な光景。


そしてよくわからないオフクロサマという言葉のせいで、精神が病んで行きそうになる。


ここの人たちはこんなお祭りを一週間も続けるのだと思うと、意味もなく吐き気がした。

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