オフクロサマ
伝統的なお祭りだろうから狂っているとは言わないが、それでも観光客からすれば十分に気味が悪いことだった。


「オフクロサマ!」


それから男は内蔵をすべて詰め終えて、糸と針をつかって人形の腹部を縫合し始めた。


最初に人形が運ば荒れてきたときよりも、明らかにお腹は膨らんだ状態になっている。


この奇妙なお祭りを見ても、誰もなにも言わず、物音ひとつたたない。


それがまた薄ら寒くて智香は自分の体をきつく抱きしめたのだった。
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