幼馴染みの鍵が開いた瞬間から溺愛が止まらない
「お兄ちゃん、頼むからイチャイチャは部屋でやって。」
 
 菜摘ちゃんが、呆れた顔でホイップクリーム作りながらこちらを見る。
 私が仕事から帰ると、必ず店の裏から入る。
 そこは厨房だ。
 すると奏ちゃんは、周りの目を気にすることなく、頬にキスをする。
「手は使えないから抱きしめられない。だから、これなら問題ないだろ。」
 何か文句でも?といいながら、恥ずかしがる素振りはない。
「お兄ちゃん、人が変わったね。噂は本当だったのか。これは、お母さんみたら卒倒するかもしれない。」
「……本当にやめて……。」
 私が真っ赤になってつぶやくと、菜摘ちゃんが笑いながら答えた。
「緑ちゃん。お兄ちゃんのこと、あんなに長い間相談にのってきたけど、本当に無駄な時間だったね。お兄ちゃんが全部悪いけど、ね。」
「ごめんね、菜摘ちゃん。返す言葉もありません。」
「いいよーお姉さま。私、嬉しいから。」

 二階に上がり、夕飯の仕上げにかかる。今日はビーフシチュー。
 下ごしらえは昼に奏ちゃんがやってくれてる。
 サラダは下のカフェの賄いと重ならないように作る。
 九時が閉店時間。大体、十時には上がってくる。
 ただ、夜はお客様も少ないので、従業員に任せて休憩時間に夕飯を食べる。
 結婚前は仕事帰りによく寄る私の来る時間を見計らい、先に食べてくれてた。
 今は、私の帰宅時間に合わせて休憩入れて一緒に夕飯を取る。
 今日はたまたま、菜摘ちゃんが来ていて、素子さんも今週いっぱいなので、店は締めまでふたりに任せる。
 
 奏ちゃんはすぐに上がってきた。
 すると、コンロの前で鍋をかき混ぜる私を後ろから抱くと、すぐに顔を捉えてキスをする。
< 28 / 36 >

この作品をシェア

pagetop